Sound + Vision ★UKエンタメ 

英国発の海外ドラマ、映画、音楽などについて語ります。

英国スキャンダル ~その英国的なるものの4つの理由

昨年私が見た海外ドラマのなかで、もっとも印象に残ったもののひとつが、ヒュー・グラントベン・ウィショーが共演した『英国スキャンダル~セックスと陰謀のソープ事件』でした。

イギリスでは、2018年5月から6月にかけて全3話で放送されました。


英国スキャンダル?セックスと陰謀のソープ事件 [DVD]

英国スキャンダル~セックスと陰謀のソープ事件 [DVD]



英国スキャンダルとは?


このドラマは、1960~70年代に英国で実際に起きた政治スキャンダル、ソープ事件をドラマ化したものです。

ソープ事件とは、自由党のジェレミー・ソープ党首が、厩舎で働くノーマン・スコット青年と関係をもち、彼の殺害計画を企てたというもの。

別れたスコットから過去の関係を暴露されることを恐れたソープは、スコット殺害を計画、殺し屋を雇いました。

1979年になって、ソープは殺人共謀・殺人教唆の疑いで裁判にかけられますが、判決は無罪。しかし、事件によりソープは失脚することになりました。


このドラマが人気を集めたのは、何といっても、ソープに扮したヒュー・グラント、スコット役のベン・ウィショーという人気英俳優の競演でしょう。

お互いに新境地を開拓し、ベンはゴールデン・グローブ賞助演男優賞も獲得しました。

また、ドラマのタイトルが示す通り、いかにも英国的な魅力にあふれていたのも人気の秘密といえます。

『英国スキャンダル~セックスと陰謀のソープ事件』の原題は、『A Very English Scandal』。

日本語訳にすると、“いかにも英国的なスキャンダル”という感じでしょうか。

そこで、今回は『英国スキャンダル』のどこが英国的なのか、その理由を探ってみました。



英国スキャンダルが、いかにも英国的な理由

英国的な理由その1・階級制度

イギリスにクラス(階級制度)がいまだに存在しているのは有名な話ですが、今作でもその知識を持って見てみると、さらに理解しやすいです。

ジェレミー・ソープは、名門パブリックスクールイートン校からオックスフォード大学に進み、政治家になり、38歳にして自由党の党首になり次期英首相に期待される超エリート。
政財界の実力者との関係も深く、高級レストランで食事をし、乗馬とヴァイオリンをたしなむ上流階級の人間。

一方、母子家庭で育ったスコットは、お金もステータスもなく、仕事も結婚も失敗、不安症を抱え、精神安定剤が手放せないルーザー。
動物を愛し、パブの女主人や友人に助けながら、何とか日々を暮らしている労働者階級の人間。

この二人は、イギリスの階級制度の代表的存在でもあり、双方がドラマのなかでどのように対決していくかが、まさに英国的な構図なのです。


英国的な理由その2・イギリスの同性愛事情



今でこそ、LBGTに寛容で、ゲイ文化が盛んなイギリスですが、昔はそうではありませんでした。

男性間の性行為が合法になったのは1967年のこと。

ソープ事件が起こった当時、同性愛は違法であり、実刑判決が下ることもあったそうです。

ソープが同性関係を持ったことが暴露されるとなると、ソープは政治生命を絶たれるばかりか、刑務所入りをする可能性もあったということですね。

ソープが殺害計画を企ててまでも、保身に走った理由はここにあるわけです。

一方のスコットはというと、ソープと関係を持ったことで不安に悩まされながらも、メディアに注目されはじめると、その注目を楽しむかのようになり、ゲイであることこそ自分自身であると、そのままの自分を受け入れていくのです。

自分らしく自由に生きること。

これぞ、英国ワーキングクラスの人間たちの誇りといえましょう。


英国的な理由その3・真面目さと不真面目さ


政治スキャンダルというと、どうも難解で重くなりがちですが、さらりとライトで、悲しくも笑える作品に仕上がったのは、ヒューとベンのふたりの演技力と魅力のおかげといえます。

また、英人気ドラマ『ドクター・フー』で有名なラッセル・T・デイヴィースの脚本も秀逸でした。

この真面目さと不真面目さ、シリアスとユーモア、悲しみと笑い、の絶妙なバランスというのが、いかにも英国的なんですね。

全力投球で熱くなっているなかで、クールでシニカルな目で見ている部分とか。

一方で、まったくやる気がないと思いきや、やるときはやるよ!で、最後に結果を見せてくるところとか。


2014年にソープ本人が亡くなったことで、事件を取り上げた原作本が出版され、2018年にBBCがドラマ化。

社会的に影響ある事件の真実を暴露する仕事の速さも英国的といえます。


英国的な理由その3・英国らしい風景がいっぱい


ドラマ全編にわたり、いかにも英国らしい風景がでてきて、英国ファンには嬉しい内容です。

ソープは下院議員なので、国会議事堂のなかの様子も垣間見られます。

ノーマンが一時期モデルとして活躍する60年代末は、スウィンギンロンドンが盛り上がっていた時代。

当時のサイケデリックでヒッピーなファッションも楽しいです。


また、ソープの実家があるサリーのオクステッド、ノーマンとソープが出会うオックスフォードシャーのチッピング・ノートンの厩舎、ノーマンが住み込むパブなど、イギリスのカントリーサイドの風景も美しいのです。

そして、特筆すべきは、ソープ=ヒュー・グラントの英語の美しさ。

ヒュー・グラント自身もオックスフォード大学出身で、ポッシュ(裕福で家柄が良い)な人ですが、彼の話す RP(上流階級やBBCアナウンサーが話す英語の発音)が本当に美しいのです。

もし出来たら、吹替えではなくて、英語字幕・音声で見てみてください。

各キャラクターが話す英語のアクセントが、役柄の階級によって異なることがわかりますよ。


というわけで、今回は、ヒュー・グラントベン・ウィショー主演の『英国スキャンダル』を取り上げてみました!